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簡易宿泊許可の取得方法完全ガイド|申請手順から注意点まで徹底解説

民泊やゲストハウス運営を検討している方にとって、簡易宿泊許可の取得は避けて通れない重要な手続きです。しかし、「申請方法が複雑そう」「どんな書類が必要なのかわからない」「費用はどのくらいかかるの?」といった疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、簡易宿泊許可の基本概念から具体的な申請手順、必要書類、費用、そして運営時の注意点まで、初心者の方でも理解できるよう詳しく解説します。この記事を読むことで、簡易宿泊許可の取得に向けた具体的なアクションプランを立てることができ、スムーズな民泊運営の第一歩を踏み出せるでしょう。

簡易宿泊許可とは?基本概要と法的位置づけ

簡易宿泊許可とは、旅館業法に基づく宿泊業の許可の一種で、正式には「簡易宿所営業許可」と呼ばれます。この許可を取得することで、合法的に宿泊サービスを提供できるようになります。

簡易宿泊許可の定義と特徴

簡易宿所営業は、旅館業法第2条第4項において「宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業」と定義されています。具体的な特徴は以下の通りです:

  • 客室の構造が比較的簡素である
  • 複数の宿泊者が共同で利用する設備がある
  • 一般的に旅館やホテルより低料金で宿泊サービスを提供
  • 民泊、ゲストハウス、カプセルホテルなどが該当

他の宿泊業許可との違い

旅館業法では、宿泊業を以下の4つに分類しています:

  1. 旅館・ホテル営業:洋式の構造及び設備を主とするもの(ホテル営業)、和式の構造及び設備を主とするもの(旅館営業)
  2. 簡易宿所営業:多数人で共用する構造及び設備を主とするもの
  3. 下宿営業:1月以上の期間を単位として宿泊させるもの

簡易宿泊許可は、これらの中でも比較的取得しやすく、初期投資を抑えて宿泊業を始められる選択肢として注目されています。

簡易宿泊許可が必要な事業と適用範囲

簡易宿泊許可の取得が必要となる事業形態について、具体的に見ていきましょう。

許可が必要な事業形態

以下のような事業を行う場合、簡易宿泊許可の取得が必要です:

  • 民泊サービス:住宅を活用した宿泊サービス
  • ゲストハウス:共用スペースを持つ宿泊施設
  • ホステル:バックパッカー向けの低料金宿泊施設
  • カプセルホテル:個室型の簡易宿泊施設
  • 山小屋・ペンション:観光地での小規模宿泊施設
  • 合宿所・研修施設:団体向けの宿泊施設

住宅宿泊事業法(民泊新法)との関係

2018年に施行された住宅宿泊事業法(民泊新法)により、民泊事業には以下の3つの選択肢があります:

  1. 旅館業法(簡易宿所営業許可):年間営業日数制限なし、事業規模に制限なし
  2. 住宅宿泊事業法(民泊新法):年間営業日数180日以内、届出制
  3. 国家戦略特区法(特区民泊):最低宿泊日数2泊3日以上、特定地域のみ

本格的な事業運営を目指す場合、簡易宿泊許可の取得が最も適した選択肢となります。

申請手続きの詳細な流れと必要期間

簡易宿泊許可の申請手続きは複数の段階に分かれており、計画的な準備が必要です。

申請手続きの全体的な流れ

簡易宿泊許可の申請は、以下の手順で進めます:

  1. 事前相談・計画策定(1-2週間)
  2. 施設の設計・改修工事(1-3ヶ月)
  3. 必要書類の準備(2-4週間)
  4. 許可申請書の提出(1日)
  5. 書類審査(2-4週間)
  6. 施設の立入検査(1日)
  7. 許可証の交付(1-2週間)
  8. 開業届の提出(営業開始後10日以内)

各段階での詳細な作業内容

事前相談段階では、所轄の保健所に相談し、施設の立地や構造が簡易宿所営業の基準を満たすかを確認します。この段階で、必要な改修工事の内容や範囲を把握できます。

施設の設計・改修工事段階では、構造設備基準に適合するよう施設を整備します。主な工事内容には、客室の設置、共用部分の整備、防火設備の設置、給排水設備の整備などが含まれます。

書類準備段階では、申請に必要な各種書類を収集・作成します。この段階での準備が申請の成否を左右するため、慎重に進める必要があります。

必要書類一覧と準備のポイント

簡易宿泊許可の申請には、多くの書類が必要です。書類の不備は審査の遅延や不許可の原因となるため、確実な準備が重要です。

基本的な申請書類

簡易宿泊許可申請に必要な基本書類は以下の通りです:

  • 簡易宿所営業許可申請書:所定の様式に必要事項を記入
  • 営業施設の構造設備の概要:施設の詳細な情報を記載
  • 施設の図面:配置図、各階平面図、正面図、側面図
  • 施設付近の見取図:周辺環境がわかる地図
  • 申請者の履歴書:個人申請の場合
  • 法人の登記事項証明書:法人申請の場合
  • 定款の写し:法人申請の場合

権利関係を証明する書類

施設の使用権限を証明するため、以下の書類が必要です:

  • 土地・建物の登記事項証明書:不動産の権利関係を証明
  • 賃貸借契約書の写し:賃借物件の場合
  • 使用承諾書:所有者以外が申請する場合
  • 建築確認済証の写し:建築基準法に適合していることを証明

消防・建築関連書類

安全性を証明するため、以下の書類の提出が求められます:

  • 消防法令適合通知書:消防署から交付される適合証明
  • 建築基準法適合証明書:建築基準法に適合していることの証明
  • 用途地域証明書:都市計画法上の用途制限を確認

書類準備のポイント

書類準備を効率的に進めるためのポイントは以下の通りです:

  1. 早期の事前相談:保健所で必要書類の詳細を確認
  2. 専門家の活用:行政書士や建築士などの専門家に相談
  3. 書類の有効期限確認:証明書類には有効期限があるものもあります
  4. 複数部数の準備:正本・副本など、必要部数を確認

構造設備基準の詳細要件と適合方法

簡易宿所営業許可を取得するためには、施設が法令で定められた構造設備基準を満たす必要があります。

客室に関する基準

簡易宿泊許可における客室の基準は以下の通りです:

  • 客室の床面積:宿泊者一人につき3.3㎡以上
  • 寝具:適当な数の寝具を備えること
  • 採光・換気:適当な採光、照明、換気の設備を設けること
  • 客室数:特に制限はないが、構造設備基準を満たすこと

共用設備に関する基準

共用部分については、以下の設備が必要です:

  • 洗面設備:適当な数の洗面設備(宿泊者5人につき1個以上が目安)
  • 便所:適当な数の便所(宿泊者10人につき1個以上が目安)
  • 入浴設備:適当な入浴設備(シャワー設備でも可)
  • その他設備:玄関、廊下、階段等の共用部分の適切な設置

防火・安全設備に関する基準

宿泊者の安全を確保するため、以下の設備が義務付けられています:

  • 消防設備:消火器、自動火災報知設備、誘導灯等
  • 避難設備:避難経路の確保、避難器具の設置
  • 防火区画:適切な防火区画の設置
  • 非常用照明:停電時の避難経路照明

給排水・衛生設備の基準

衛生的な環境を維持するため、以下の設備が必要です:

  • 給水設備:十分な水量と水圧を確保した給水設備
  • 排水設備:適切な排水処理設備
  • 汚物処理:適切な汚物処理設備
  • 清掃用具:清掃に必要な用具の備え付け

申請費用と開業までの総費用概算

簡易宿泊許可の取得には、申請手数料のほか、施設整備費用など様々な費用が必要です。

行政手続きにかかる費用

簡易宿泊許可の申請に直接かかる費用は以下の通りです:

  • 許可申請手数料:20,000円~30,000円(自治体により異なる)
  • 建築確認手数料:10,000円~50,000円(建物規模により変動)
  • 消防適合検査手数料:5,000円~15,000円
  • 各種証明書取得費用:5,000円~10,000円

施設整備にかかる費用

既存建物を簡易宿所として利用する場合の一般的な改修費用:

  • 内装工事:100万円~500万円(規模・仕様により大幅変動)
  • 設備工事:50万円~200万円(給排水、電気、ガス工事)
  • 防火設備工事:30万円~100万円(消防設備の設置)
  • 家具・備品:50万円~150万円(ベッド、リネン、家電等)

専門家への報酬

専門家に依頼する場合の一般的な費用:

  • 行政書士報酬:10万円~30万円(申請代行)
  • 建築士報酬:20万円~50万円(設計・監理)
  • 消防設備士報酬:5万円~15万円(消防設備設計・施工)

開業後の運営費用

許可取得後の継続的な費用も考慮が必要です:

  • 営業許可更新手数料:5年ごとに10,000円~15,000円
  • 定期検査費用:年間5万円~10万円
  • 保険料:年間10万円~30万円(施設賠償責任保険等)
  • 清掃・メンテナンス費用:月額5万円~20万円

よくある申請時のトラブルと対処法

簡易宿泊許可の申請過程では、様々なトラブルが発生する可能性があります。事前に把握しておくことで、スムーズな申請が可能になります。

用途地域の制限によるトラブル

最も多いトラブルの一つが、用途地域による営業制限です:

  • 住居専用地域:原則として簡易宿所営業は不可
  • 住居地域:一定の条件下で営業可能
  • 商業地域・工業地域:基本的に営業可能

対処法

  1. 事前に市役所・区役所で用途地域を確認
  2. 住居系地域の場合、特例要件を満たすか検討
  3. 必要に応じて用途変更の手続きを検討

近隣住民からの反対

民泊やゲストハウス開業に対する近隣住民の反対も頻発する問題です:

主な反対理由

  • 騒音問題への懸念
  • 治安悪化への不安
  • ゴミ出しルールの乱れ
  • 駐車場不足の問題

対処法

  1. 開業前の近隣住民への説明会開催
  2. 運営ルールの明確化と周知
  3. 24時間対応の緊急連絡先設置
  4. 定期的な近隣との意見交換

構造設備基準の適合不備

施設が構造設備基準を満たしていないケースも多く見られます:

よくある不備

  • 客室面積の不足
  • 共用設備数の不足
  • 消防設備の不備
  • 避難経路の確保不足

対処法

  1. 設計段階での保健所との事前相談
  2. 専門家(建築士、消防設備士)の活用
  3. 工事完了前の中間検査実施
  4. 余裕を持った施工スケジュール設定

許可取得後の運営管理と更新手続き

簡易宿泊許可を取得した後も、適切な運営管理と定期的な更新手続きが必要です。

日常的な運営管理義務

簡易宿泊許可を受けた施設では、以下の管理義務があります:

  • 宿泊者名簿の作成・保存:宿泊者の氏名、住所、職業等を記録し、3年間保存
  • 施設の清潔保持:客室、共用部分の定期清掃と衛生管理
  • 設備の維持管理:消防設備、給排水設備等の定期点検・整備
  • 宿泊料金の掲示:料金表の見やすい場所への掲示
  • 営業者の氏名等の掲示:営業者名、許可番号等の掲示

法令遵守事項

営業継続のために遵守すべき法令事項:

  • 旅館業法の遵守:営業基準、構造設備基準の継続的な遵守
  • 消防法の遵守:消防設備の維持管理、防火管理者の選任
  • 建築基準法の遵守:建物の適法な維持管理
  • 食品衛生法の遵守:朝食提供等を行う場合

許可の更新手続き

簡易宿所営業許可は5年ごとの更新が必要です:

更新手続きの流れ

  1. 更新申請書の提出:有効期限の30日前までに申請
  2. 必要書類の準備:営業報告書、施設の現況報告等
  3. 施設検査:構造設備基準への適合確認
  4. 更新許可証の交付:審査完了後、新しい許可証を交付

更新時の注意点

  • 更新手数料の納付(10,000円~15,000円程度)
  • 法令改正への対応確認
  • 施設の経年劣化への対応
  • 近隣環境の変化への配慮

営業廃止時の手続き

営業を廃止する場合は、以下の手続きが必要です:

  • 廃止届の提出:廃止から10日以内に保健所へ提出
  • 許可証の返納:営業許可証の返納
  • 宿泊者名簿の保存:廃止後も3年間の保存義務
  • 各種契約の解除:保険契約、設備保守契約等の適切な処理

まとめ:簡易宿泊許可取得の成功ポイント

簡易宿泊許可の取得は、適切な準備と手順を踏むことで確実に実現可能です。本記事で解説した内容を踏まえ、成功のポイントをまとめます。

申請成功の重要ポイント

  • 早期の事前相談:保健所での詳細な確認が最重要
  • 専門家の活用:行政書士、建築士等の専門知識を活用
  • 十分な資金準備:申請費用だけでなく、施設整備費用も含めた資金計画
  • 近隣への配慮:地域との良好な関係構築
  • 継続的な管理体制:取得後の適切な運営管理体制の構築

簡易宿泊許可は、民泊やゲストハウス事業を本格的に展開するための重要な許可です。申請には時間と費用がかかりますが、適切な手順を踏むことで必ず取得できます。不明な点は専門家や所轄の保健所に相談し、計画的に進めることが成功への近道です。

これから簡易宿泊許可の取得を検討されている方は、本記事を参考に、まず所轄の保健所への事前相談から始めることをお勧めします。適切な準備により、スムーズな許可取得と成功する宿泊事業の運営を実現してください。

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