無責任な価格提案を信じない
価格設定で失敗した事例を一つご紹介しましょう。
そのお客さまは、別のお客さまからの紹介で、自宅を売却するための査定依頼がきました。とある地価の高い住宅地にある、広い土地付きの一戸建てです。建物は築18年とあってそれほど古いわけではないのですが、全くメンテナンスをしてこなかったために、ひどく傷んだ状態でした。そういった事情を加味したうえで9000万円の査定価格を出しました。
これに対してお客さまは「まだ築18年なんだからもっと高く売れるはずだ」と反論され、1億1000万円で売りに出すことを要求しました。実は、そのお客さまは別の知り合いの不動産会社にも相談したところ、1億円以上でも売れると言われていたようなのです。仕方なく言う通りの価格で販売を開始しましたが、案の定なかなか売れません。半年後には1億円近くに値を下げましたが、それでも売れません。
お客さまはしびれを切らして当社との媒介契約を解約し、「1億円以上で売れる」と言った知り合いの不動産会社のところに行ってしまいました。結局その後、どうなったか・・・最終的に売れた価格は7800万円だったということです。ほぼ土地代だけの価格です。最初から適切な価格設定で売り出していれば、9000万円で売れたかもしれません。無茶な価格設定をしてしまった結果、最終的には物件が持つ実力よりも大幅に安い価格で売るはめになってしまったのです。
不動産会社が委任を取りたいがために、高い査定価格を出してくることはよくあります。欲張ってそんな価格を信じてしまうと、後悔することになるかもしれません。重要なことはその価格の根拠だと言えます。